研究課題/領域番号 |
18KK0342
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
理論経済学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
安田 洋祐 大阪大学, 大学院経済学研究科, 教授 (70463966)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2022
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
15,470千円 (直接経費: 11,900千円、間接経費: 3,570千円)
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キーワード | 格差 / パレート効率性 / 再分配 / 安定性 / 分権的市場 / 完全競争市場 / マッチング市場 / 初期保有 / 非競争市場 / マーケットデザイン / マッチング理論 |
研究開始時の研究の概要 |
世界各国で貧富の格差や不平等が深刻な社会問題となっている。格差問題が「問題」であり続けている大きな理由は、格差を解消するような再分配の実現が様々な事情から難しいからだろう。 基課題においては、この「再分配が難しい」という現実的な制約をモデルに取り込み、同質財市場における資源配分の問題を厚生経済学的な視点から検討した。 国際共同研究では、同質財市場からより一般的なマッチング市場へと分析の拡張を行う。さらに、市場参加者たちのインセンティブを考慮に入れて、マーケットデザイン的な視点から分析を深める。具体的には、取引数量が競争市場よりも多くなるような具体的なメカニズムの検証や提案などを試みる予定である。
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研究成果の概要 |
本研究ではまず、完全競争市場をはじめとする様々な経済メカニズムが、効率性に加えて分配にどのような影響を与えているのかを評価できる理論的なフレームワークを構築した。次に経済メカニズムと格差との関係を分析して一般的な含意を導いた。具体的には、再分配に一定の制限がある現実的な状況における弱い効率性の概念を提唱し、同質財市場においては、すべての効率的な配分の中で競争市場均衡が取引量を最も少なくすることを明らかにした。さらに、一定の条件のもとで異質財市場にこの結果が拡張できることも示した。以上の成果は、競争的な市場が取引数量を最小化する傾向を持つ、特異なメカニズムであることを示唆している。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
現代経済学の金字塔である「厚生経済学の基本定理」(特に第二基定理)が示すように、どのような再分配もコストをかけず実現可能なのであれば、効率性と平等性という目標は矛盾しない。しかし、再分配に関するこの強い仮定は、現実の世界では近似的にすら満たされていない。本研究は、既存研究の暗黙の前提を疑い、再分配の難しさを明示的に考慮するような新たな理論的なフレームワークを構築した。さらに、そのフレームワークを通じて、「完全競争市場が取引数量を最小化する」という意外な結果を導いた。市場やグローバル化が分配や格差に与える影響を厳密に分析するための学術的な土台を築いた本研究の社会的意義や貢献は大きい。
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