研究課題/領域番号 |
18KK0373
|
研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
|
配分区分 | 基金 |
研究分野 |
地域研究
|
研究機関 | 立命館アジア太平洋大学 |
研究代表者 |
吉川 卓郎 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 教授 (30399216)
|
研究期間 (年度) |
2019 – 2023
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
13,520千円 (直接経費: 10,400千円、間接経費: 3,120千円)
|
キーワード | ヨルダン / 君主制権威主義体制 / 安全保障 / 部族 / イスラーム主義 / 外交 / ヨルダン政治 / 安全保障化 / 社会運動 / 権威主義体制 / 王制 / イスラーム / 政治学 / アイデンティティ / 民族 / 国家‐社会関係 / 国際関係 / 地域研究 / アラブ王制 / 政治 |
研究開始時の研究の概要 |
本国際共同研究において、応募者は基課題を足掛かりに、これまで本格的な分析がなされていないヨルダン政治における部族社会による影響力の把握を試みる。具体的には、ヨルダン建国当初から王政の最重要支持基盤であり続けてきた南部部族社会と国家の、今日における関係の測定を目指す。ここではヨルダン大学を拠点に、共同研究を実施する。さらに、同国安全保障の要となる組織に多数人材を輩出してきた南部部族社会における政治・経済の構造解明を目指す。そのため、南部のフサイン・ビン・タラール大学を拠点に、共同研究を行う。最終的には、基課題の掲げるヨルダンの総合的な研究ならびにアラブ王制研究の飛躍的発展を目指す。
|
研究実績の概要 |
令和4年度の本研究課題研究は、新たに共同研究者となったムハンマド・バニサラメ教授(ヤルムーク大学)との協力に大きな進展があった。実施した共同研究の内容は、①ヨルダンの憲法改正を通じた王権の強化とその問題点の分析、②地方の有力部族や名望家を経由した政治腐敗の構造の分析である。このうち①については共著でペーパーを執筆し、その中間報告として、10月に日本国際政治学会年次大会にて共同発表した。COVID-19に係る入国制限が大幅に緩和されたため、バニサラメ教授の入国および対面での共同発表が実現し、関連分野の研究者らとの交流の機会も得た。同学会での成果をもとに、両者でペーパーの理論的・実証的側面を強化し、英字ジャーナルへの投稿準備を進めている。 上記②に関しては、吉川が中心となって論考を進めてきた。まずは単独でクローズドの研究会(小杉泰・立命館大学教授主催の科研費基盤A研究会)にて研究進捗状況を報告し、出席した研究者からのコメントを得た。この成果を踏まえ、令和5年5月の地中海学会(於チェコ共和国ブルノ市)に研究発表を申し込み受理されたのでペーパー執筆を進めている。 また、令和4年度に入り海外渡航が比較的容易になったため、海外研究調査・発表の機会拡大に努めた。例えば、令和3年度の研究成果を5月のOBIC会議(於ブダペスト市)と地中海学会(於リスボン市)で発表した。さらにOBICでの発表内容をもとにした論文を英字ジャーナルに投稿し、刊行された。また8月にはヨルダンのイルビド市およびマフラク市に滞在し、ヤルムーク大学を拠点にバニサラメ教授と共同で上記①②に関する調査およびヨルダンの要人や知識人への取材を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.海外調査・研究発表 本研究課題の中核を為す海外共同調査や研究発表について、本年度は大きな進展があった。令和3年度に準備を進めた国内外の学会・研究会発表は、全て予定通りに、また対面での参加が実現した。ただし、COVID-19に係る現地での行動制限が完全になくなったわけではないため、夏季のヨルダン調査では、当初予定していた2か月程度の滞在から、10日間への大幅な短縮となった。このため、取材・訪問対象を大幅に絞ったが、結果的にアンマンでのハサーウネ元首相はじめ要人への取材、またヨルダン国民議会訪問ならびに議員団への取材を実施できた。 2.成果物の刊行 令和3年度から準備を進めていた学会ペーパーの1つを、令和4年度前半に論文として刊行できたため、他の課題に取り組む余裕ができた。ただ、バニサラメ教授と進めてきた①ヨルダンの憲法改正を通じた王権の強化とその問題点の分析、②地方の有力部族や名望家を経由した政治腐敗の構造の分析に関する論文の執筆に時間を要し、年度内のジャーナル投稿には間に合わなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
完全とは言えないもののCOVID-19関連の渡航・行動制限の問題がほぼなくなったことから、令和5年度には当初計画の柱のひとつである中長期の現地調査を実施し、これらに基づく論文等を完成させることで、本研究課題で掲げた内容の総仕上げを行いたい。具体的には、以下の通り計画している。 まずフィールド調査については、昨年のヨルダン北部での調査に続き、アンマン市を中心に質的調査ならびに対面での取材を行う。具体的には、バニサラメ教授と令和4年度から続けている憲法改正問題研究、地方部族と名望家の関わる政治腐敗問題研究のフォローアップ調査を実施する。また、アンマンでの共同研究者であるムハンマド・エイエダート准教授(ヨルダン大学)と共同で、ヨルダンの国民アイデンティティの歴史的形成に関する共同研究の深化を目指す。 また研究成果の公開についても、アンマンでの調査を通じて得られた憲法改正問題研究および政治腐敗問題研究の成果を共著ないし単著論文として完成し、英字ジャーナルへ投稿する。また、令和6年度のIPSA、ISA、MESA、MSAといった国際学会や日本比較政治学会、日本中東学会などの国内学会での成果発表に向けて準備する。
|