研究課題/領域番号 |
18KK0426
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研究種目 |
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
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配分区分 | 基金 |
研究分野 |
植物栄養学・土壌学
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研究機関 | 佐賀大学 (2019-2023) 広島大学 (2018) |
研究代表者 |
西田 翔 佐賀大学, 農学部, 准教授 (40647781)
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研究期間 (年度) |
2019 – 2024
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,690千円 (直接経費: 11,300千円、間接経費: 3,390千円)
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キーワード | カリウム / 転写因子 / 選択的スプライシング / シロイヌナズナ / 無機栄養 / 栄養 / 植物栄養 |
研究開始時の研究の概要 |
申請者は基課題(16K18667)において、植物の主要栄養素であるカリウム (K) の体内輸送を制御する転写因子「MYB59」をシロイヌナズナから発見し、さらにMYB59はK欠乏に応答してmRNAのエキソン構造が改変されることでその機能が活性化されることを示してきた。これらの成果を基盤に本課題では、MYB59の機能解析を通して植物の低K応答における遺伝子発現制御ネットワークを初めて明らかにするとともに、MYB59におけるエキソン構造制御を介した体内K輸送調節と低K耐性の分子機構を解明する。そして最終的に、エキソンの構造制御を介した植物の栄養応答機構の存在を世界に先駆けて立証する。
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研究実績の概要 |
本研究は、シロイヌナズナ由来の転写因子であるMYB59の機能解析を通して、植物の低カリウム(K)応答における遺伝子発現制御機構を明らかにするとともに、MYB59 mRNAにおけるスプライシング調節を介した低K応答機構の詳細を明らかにすることを目的としている。 (1)RNA-Seq解析の結果、MYB59は根毛形成関連遺伝子の上流に位置することが明らかとなった。そこで、MYB59欠損型植物における低Kに応答した根毛形成を調査した。野生型植物では低K条件に応答して根毛量が著しく上昇することが確認された一方で、MYB59欠損型では根毛形成の誘導は全く認められなかった。ただし、MYB59が転写制御するK+輸送体のNPF7.3遺伝子の欠損型でも同様に低Kに応答した根毛形成が認められなかった。低Kに応答した根毛形成は従来よりよく知られる植物の応答反応であるが、今回の試験からこの応答はMYB59-NPF7.3が関与することが初めて示された。MYB59欠損型で発現量が有意に低下していたHAK5等のK+トランスポーター遺伝子は根毛で強く発現することから、変異体では根毛形成の応答が起きなかったことでK+トランスポーター遺伝子の発現が低下したと考えられた。 (2)MYB59-GFP導入植物を用いたChIP-Seq解析の結果、NPF7.3の上流領域において有意なMYB59-GFPの結合ピークが検出された。ただし、過去に報告されている情報とは大きくことなり、NPF7.3の開始コドンより上流5 Kb周辺にピークが検出された。反復試験よりこの結果は再現されたことから、MYB59の正確な結合領域が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、これまで明らかにされていなかった低Kに応答した根毛形成の原因遺伝子がMYB59-NPF7.3であることを明らかにすることができ、さらにこのことに起因してK+トランスポーター遺伝子の発現上昇も抑制されることが示された。これは本研究の最終目的であるMYB59を介した植物の低K応答機構の解明に大きく貢献する成果である。また、ChIP-Seq解析がワークしていることが確認でき、現在MYB59のさらなる制御遺伝子の同定に向けて解析を進めることができている。
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今後の研究の推進方策 |
(1)NPF7.3を介した根毛形成誘導のメカニズムを明らかにする。NPF7.3はオーキシン輸送能を有することが示唆されていることから、根におけるオーキシン分配を観察しその可能性を調査する。今年度までにオーキシンレポーター導入植物を入手しており、また-Kに応答してオーキシン分配が有意に変化することまでは確認できている。現在NPF7.3欠損型植物にオーキシンレポーターを導入した植物の作成を進めている。 (2)ChIP-Seq結果とRNA-Seq結果の統合により新規MYB59の標的遺伝子候補を同定する。今年度の結果を受け、MYB59欠損のほかにNPF7.3欠損型のRNA-Seq解析を実施し、データを入手した。来年度は共同研究先においてこれらの結果を統合解析し、NPF7.3とは独立したMYB59標的遺伝子の同定を目指す。
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