研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
がん幹細胞は治療抵抗性と再発に関わるがんの責任細胞として知られている。近年がん幹細胞に存在する一部の亜集団が自ら微小環境(ニッチ)を構築することで、がん再発に寄与することを明らかにした。このような「ニッチ構築がん幹細胞」はニッチ形成とがん幹細胞の維持を一度に制御し得る新たな治療標的と考えられる。一方、近年の再生学領域において幹細胞に直接作用する機能性高分子材料の存在が明らかとなり、研究・医療への応用が期待されている。本研究はニッチ構築がん幹細胞に機能性の高分子材料を同定し、その物性を明らかにすることで、新たながん幹細胞維持機構の解明と治療法の開発を目指す国際的且つ学際的な共同研究である。
本研究は高分子化学分野の先駆的第一人者英国エジンバラ大学Mark Bradley教授との国際的且つ学際的な共同研究を推進し、最先端の化学技術「生体光重合」を日本のがん研究へと導入することができた。一連の成果から、がん幹細胞の低分子耐性を克服し微小環境の多面的制御を実現し得る次世代創薬ツールとして、合成ポリマーの有用性が示唆された。またモノマー投与後の局所放射線照射により脳(腫瘍)内でポリマー化(抗がん剤化)を行うことで血液脳関門や全身性の副作用を克服し得る革新的がん根治コンセプト「放射線重合療法」を確立、その実現へ向けた「ポリマー・ハイドロゲル創薬基盤」の構築を果たした。
合成ポリマーは理論上無限のライブラリー構築と生体透過光による重合が可能であることから、生体時空間の薬理構成的な解明に直結する新しい光薬理学手法として、学術的な波及効果は高い。また、抗体等の天然高分子と異なり、安価で大量製造が可能でロット間の差も少ないことから、経済負担等の面において副次的なメリットが期待され、核酸・抗体に続く次世代の高分子創薬シーズとして社会に与えるインパクトは高い。放射線重合は、脳腫瘍等あらゆる中枢神経系疾患に高分子治療の道を拓くほか、放射線耐性を化学療法がカバーする夢のハイブリッド治療法として今後のがん創薬・医療体系に破壊的な変革をもたらすと考えられる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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