研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
HTLV-1感染患者は九州・沖縄地方で多く認められるが、日本以外にも感染者流行地が存在する。感染流行地が異なるとHTLV-1関連疾患の種類も異なる事が知られている。本研究課題では、海外流行地域(アルゼンチン、オーストラリア)において異なる臨床像を示すHTLV-1感染患者検体を用いて地域性などの環境因子を含む、病原性や疾患指向性の違いを生むメカニズムについて解析した。我々が以前に確立したサンプル濃縮法は、98名の日本人HTLV-1患者から分離された臨床サンプルのプロウイルス配列と組み込み部位の同時同定に有用であることを今回の解析により示し、Cell Reports誌に報告した。また、本解析手法はアルゼンチンの感染患者サンプルにも適用可能であった。HTLV-1遺伝子の発現調節に着目し、HTLV-1 RNAの転写後調節におけるZAPタンパク質の役割を調べた。Capped RNAのRNAseq であるCAGEを行った結果、HTLV-1トランスクリプトの分解が考えられた。ZAPがCG コンテンツの高いRNA転写物を認識し、分解を誘導することはこれまで報告されているが、実際、HTLV-1でも高いCG コンテンツが認められた。また、感染細胞株にZAPをターゲットにした siRNAを導入すると、ZAPの発現低下と共にHTLV-1 p19タンパク質が上清中に増加した。一方で、ZAPの強制発現実験ではp19の減少が観察された。これらの研究成果はRetrovirology誌に報告した。HTLV-1の宿主ゲノムへの組み込みが、非感染細胞では見られない転写産物の新規発現を引き起こし、それが発癌に関与する可能性が考えられている。今回、30症例中19症例でセンス鎖とアンチセンス鎖でウイルス-宿主のキメラ転写産物を検出した。また、臨床サンプルを用いたシングルセルレベルでのRNAseqも行った。
すべて 2019
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 6件)
Retrovirology
巻: 16 号: 1 ページ: 38-38
10.1186/s12977-019-0500-3
Cell Reports
巻: 29 号: 3 ページ: 724-735
10.1016/j.celrep.2019.09.016