研究課題/領域番号 |
19013002
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研究種目 |
特定領域研究
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
理工系
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田島 文子 広島大学, 大学院・理学研究科, 教授 (50346475)
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研究期間 (年度) |
2007 – 2008
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研究課題ステータス |
完了 (2008年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2008年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2007年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
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キーワード | スタグナントスラブ / 広帯域地震波形解析 / マントル微細構造 |
研究概要 |
トモグラフィーで捉えられた高速度異常域を強くサンプルした広帯域実体波形(〜1HZ)を解析し、マントル遷移層および660km不連続面付近の構造の不均質性を詳細に調べた。結果として、かなりの部分がモデルM3.11(遷移層下部に高速度異常があり、不連続面が下降している)ないしモデルM2.0(遷移層下部に高速度異常があるが、不連続面は下降していない)などの層構造モデルで説明がつくことが確認できた。又、含水のmajorite(mj)のClapeyron slopeは660km付近で正であるという実験結果に基づき、低温のスタグナントスラブを含む遷移層最下部にはringwoodite(rw)で代表される領域に接してmjに富んだ含水鉱物が溜まっているという仮説を提唱した。そのような組成を持つ物質がrw組成に対応する速度構造を持った領域に隣り合って存在するかという疑問に対しては、遷移層では、含水のgarnetはolivineよりも流れやすく密度が高いという裏づけがあり、重たくて流れ易ければ、rw組成の両側にmjに富んだ含水鉱物が溜るという状況は考えられる。一方、mjの弾性波速度はrwより系統的に遅い、という端成分の測定に基づく実験結果はM2.0モデルの説明として矛盾するように思えるが、Ca-perovskiteは600kmを越える深さからでき始め、高速度を示すstishoviteの混在(10%程度)なども考慮すると、M2.0は含水mjを主成分とする物質が遷移層下部に溜った構造を表すという仮説は可能と思われることを示唆した。構造境界付近を強くサンプルしたP波形では、まれに顕著なbroadeningを起こしていることはすでに報告しているが、これらの波形は、伝播経路の局所的な低速度域でSV→P変換を起こしたものと推測し、波形モデリングでその可能性を裏付けた。スラブ内では、低温異常のみならず含水の影響で、マントル組成鉱物の相転移が多様であり、当波形解析では、これらの多様性の結果創りだされたと思われる局所的な低速度異常を含む構造の変化を鮮明に捉える解像力があることを実証した。このような微細構造の研究は、ミクロな物理過程(鉱物物性)に支配されているマクロの物理(スラブダイナミクス)を理解するヒントを探ることに繋がると思う。
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