研究概要 |
この研究の目的は, ミリ波・サブミリ波における原始惑星系円盤起源のガス放射とダスト連続波をサブミリ波望遠鏡ASTE望遠鏡により系統的に観測し, その結果を遠赤外線データと比較することで, 円盤の物理・化学構造を解明することであった。研究の進展は次の3点にまとめられる。(1) 昨年度のダスト連続波観測で明らかになったおおかみ座分子雲IIIのフィラメント構造をCO(J=3-2)輝線の観測をASTE望遠鏡観測で実施した。その結果, フィラメント本体ではCO(J=3-2)輝線は弱い一方で, 周辺ではむしろ強くまた広い速度幅を持つ成分が存在していることが明らかになった。これらは, 分子雲辺縁領域で温度が高く活発な乱流が存在していることを示唆する。(2) 連続波カメラAzTECを用いた観測により, おおかみ座分子雲IVの広域観測を行った。その結果, その内部に存在する前主系列星3天体から原始惑星系円盤起源と見られるダスト連続波放射を検出した他, 星形成を活発に起こしつつあると見られるフィラメント状構造を見出した。(3) 非常に質量の小さい前主系列星おうし座FN星に付随する原始惑星系円盤に対し, ハワイサブミリ波干渉計(SMA)を用いた高解像度観測を実施した。得られた画像を遠赤外エネルギースペクトルに対する円盤モデルを用いた解析とあわせることで, この星の周りの原始惑星系円盤が大変コンパクト(半径30天文単位)で低質量(太陽質量の1/1000以下)である一方, その周囲を半径260天文単位程度のハローが取り巻いていることが明らかになった。(1),(2)は学会で発表するとともに, すべての成果を投稿論文として準備中である。またこれらを踏まえ, 現在建設が進められている大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)を用いた観測戦略についても考察し, 日本天文学会春季年会にてその結果を発表した。
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