研究概要 |
セグメント構造ダイヤモンド状炭素(segment-structured DLC : S-DLC)膜をステータ振動子の摩擦駆動面に形成し, 駆動性能(速度・推力)を損なうことなく寿命(摩耗痕の形成・運転不可となるまでの時間)を長くすることを検討している. 弾性表面波リニアモータを対象として, 摩擦駆動面のLiNbO_3基板表面にS-DLC膜を導入して駆動実験を行ったところ, 期待通りの推力を発揮しなかった. 振動子の材質が圧電単結晶LiNbo_3であり, 従来のDLC製膜パラメータでは最適なS-DLC膜が得られなかったためと推察した. そこで, LiNbO_3基板の摩擦駆動面にセグメント構造のクロム膜を形成し, その上からDLC膜の連続膜を形成し, セグメント構造DLC膜とした. この膜の形状を観察したところ,形状・高さがそろうており, 駆動面(スライダと接触する面)の表面粗さがnmオーダーになっていることを確認した. 駆動実験を行ったところ, 従来の弾性表面波リニアモータと同程度の駆動性能を得ることができた. また, 繰り返し駆動において, DLC膜が剥離する現象は見られなかった. LiNbO_3基板とクロム膜, 及び, クロム膜とDLC膜それぞれの密着度が良いためと考えられる. セグメント構造DLC膜を摩擦駆動面に導入し, 耐摩耗性を向上させつつ, 従来と同程度の駆動特性を得ることができた.
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