研究概要 |
マルテンサイト変態による形状変化を利用し熱を直接機械的エネルギーに変換する形状記憶合金は,エネルギー密度が圧電材料の約1000倍高く,形状変化が変態温度で起こるので温度センサーとしての機能も併せ持つ。従ってアクチュエータ素子の大幅な小型化・簡略化・低コスト化が可能であり,特に複雑な機械機構の適用が難しい極低温の様な極限環境下におけるアクチュエータ素子の駆動に適している。しかし,極低温形状記憶合金の特性は未開拓の分野である。本研究では極低温アクチュエータの駆動素子に適用できる形状記憶合金を開発する。本年度はCu-Al-Mn合金について,低温形状記憶合金としての適用の可能性を調べた。Cu-Al-Mn合金の場合,室温で熱力学的に安定なのはL2_1規則構造であるが,規則化温度が比較的低温にあるため,焼き入れ直後は非常に規則度が低い状態にあると考えられる。時効処理によって規則度が変わることで変態温度が変化すると考えられる。Cu-14Al-(10-18)Mn系合金の母合金を高周波溶解で作製し圧延により板材を得た。この板材から各測定用の試料を切り出し,1173K,5分の溶体化処理後水中に焼き入れた。図は溶体化+時効後の各合金についての電気抵抗と温度の関係を示した。14〜16Mn合金は温度の低下と共に電気抵抗が減少する,非常に金属的な傾向を示している。しかし12Mn合金は冷却時に100K付近で大きく抵抗が上昇し,加熱時は減少するという挙動を示している。この温度でより比抵抗の高いマルテンサイト相が生成するためと考えられる。この曲線から求められた変態温度はM_s=117K,M_f=100 K,A_s=119 K,A_f=131Kである。その結果,Cu-14Al-12Mn合金に置いて液体窒素温度付近での形状記憶効果が期待できることが明らかになった。
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