研究概要 |
Pd-11at%Ni合金を用いて曲げ挙動を示すように設計したアクチュエータを作製して, その動作挙動を導入する水素圧で制御することを試みた. 0.2atmずつ段階的に水素を導入した際のアクチュエータの変形挙動を観察した結果, 水素圧に応じて段階的に変形したことから, 水素圧を制御することにより, アクチュエータの動作制御が可能であることがわかった. また, Pd-11at%Ni/Cu積層試料の一部に予め塑性変形を導入したアクチュエータを作製し, 塑性変形部分がアクチュエータの変形挙動に及ぼす影響を調べた. その結果, アクチュエータはねじれ変形すなわち回転挙動を示した. このことから, 複雑な構造を用いることなく, 様々な動作挙動を示すアクチュエータの作製が可能であることがわかった. さらに, Pd合金よりも応答速度が速く, よりアクチュエータに適した合金と考えられるV合金を用いたアクチュエータを作製し, その動作挙動を調べた. ここで, V合金は活性が高く, 取り扱いが困難な問題があるため, 試料表面の保護および変形挙動の改善のために, V-3at%Ti合金/Cu積層試料のV合金表面にPdをスパッタした3層積層試料を作製し, 曲げ挙動を示すアクチュエータを作製した. その結果, V-3at%Ti合金を用いたアクチュエータは, Pd合金を用いたものと比較して約4倍の応答速度を示した. その後, 水素を脱蔵させることにより変位の回復を試みたが, わずかしか回復されなかった. これは, 変形によりアクチュエータに塑性変形が導入されたためと考えられたことから, 導入する水素量を制御することにより, この問題は解決可能であると考えられる, 以上の結果から, 水素吸蔵合金を用いた単純構造で様々な変形挙動を示すアクチュエータおよびV合金を用いることにより応答速度に優れたアクチュエータの開発のための設計指針を得ることができた.
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