研究概要 |
SOFCの低温作動化に向けて, 空気極特性の改善は不可欠である。空気極特性の改善には空気極反応機構の解明, それに基づく空気極最適構造の構築が必要であるが, 従来用いられてきた多孔質多結晶電極は, 三相界面と二相界面を介す複数の反応経路の混在, 粒体物性の多様性により複雑な反応系を有するため, 反応機構の解明は困難である。本研究では電極・電解質ヘテロエピタキシャル系により, 酸素還元電極反応場の規定と単純化を試みた。電極材料としては結晶構造, 酸化物イオン伝導, 電子伝導すべてにおいて強い異方性を有するK_2NiF_4型電極材料Nd_2NiO_<4+δ>NNO)に注目した。 昨年度得られたNNO(110)//YSZ(100), NNO(100)//YSZ(110)に加え、NNO(001)//YSZ(111)の配向関係を示すエピタキシャル系の構築に成功し, 主拡散経路が基板面に対して垂直である面と, 平行である面を選択的に曝露することに成功した。 NNO(110)//YSZ(100)の配向膜を用いて, 様々な条件下でインピーダンス測定を行うことで、単純な等価回路での反応素過程の分離と, これによる正確な定量解析, 電極反応の異方性の抽出を試みた。特に0.5Vのカソード分極下では, 1つの抵抗R_1(オーム損)と, 3つのRC並列抵抗R_2-R_4(R_2 ; YSZ,R_3 ; 電荷移動, R_4 ; 吸着・解離)からなる等価回路モデルに明確に分離され, 良好なフィッティングが行えた。酸素分圧依存性の結果より, 電極反応に由来する成分の和R_3+R_4がPo_2^<1/4>に依存することから, 電極反応の律速段階は気相/電極界面におけるO+2e^-O^<2->の電荷移動抵抗であることが分かった。更に, 電極反応の活性化エネルギーはYSZ(100) ; 150.7kJ/mol<YSZ(110) ; 177.8kJ/mol<YSZ(111) ; 211.2kJ/molとなり, 配向方位によって違いが見られたことから, 電極反応には表面の原子配列が影響することが示唆された。
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