研究概要 |
1-メトキシ-3-トリメチルシリルオキシ-1, 3-ブタジエン、いわゆるDanishefskyジエンは電子豊富で反応性が高いジエンとしてDiels-Alder反応に広く用いられ、置換シクロヘキセンおよび置換シクロヘキサノンの合成に威力を発揮してきた。近年, 不斉触媒開発の発展に伴い不斉Diels-Alder反応の開発も広く検討されてきたが、Danishefskyジエンを用いるDiels-Alder反応の不斉化はジエンの不安定性のために困難を極め, 唯一、非常に活性なカルボニル化合物とのヘテロDiels-Alder反応に限られていた。我々は独自に開発した2, 2'-(ビスアシルアミノ)ビナフタレンとYb(OTf)_3, 3級アミンから調整される光学活性錯体が電子不足アルケンとDanishefskyジエンとの炭素環形成型不斉Diels-Alder反応を触媒することを見いだした。今年度は以下のような知見が得られた。 1. 光学活性2, 2'-(ビスアミノ)ビナフタレンとイソシアナートから調整される光学活性ビスウレア配位子も有機アミン存在下Yb(OTf)_3と錯体を形成し、Danishefskyジエンと電子不足アルケンとのDiels-Alder反応を触媒し、2, 2'-(ビスアシルアミノ)ビナフタレンを用いた反応とは異なる反応選択性を示した。 2. 不斉配位子として上記ビナフタレン型配位子のみならずビフェニル型配位子も有効であることが判明した。 3. 本反応により容易に得られるキラルシクロヘキセン誘導体を用いてAmgen社により開発され、meranin-concentrating hormon receptorl (MCHr1)拮抗剤として抗肥満作用等が報告されている側GO76合成中間体の触媒的不斉合成を行った。
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