研究概要 |
エノンに対するアセチリドの1, 2-付加反応で得られるエンインアルコールのTMS-エーテルとルイス酸触媒の組み合わせで発生させるπ-共役系炭素陽イオンと求核反応剤, アルコール及びスルホアミドあるいはカルバメート, との反応によって, 共役π系置換基(ペント-2-エン-4-イン-1-イル基)とアリル基あるいはプロパギル基から構成されるエーテルやN-上に同様の共役π系置換基を含むアミドを良好な収率で得ることが出来た。得られたエーテル及びアミドの構は, "エン"反応のシステムであり, もし"エン"反応が進行すればC(3)一位に"exocyclic double bond"を有するヘテロ5員環化合物の一般的な合成法となりうるので, その可能性について検討(トルエン, 90°C)した結果, 良好な収率でテトラヒドロフラン誘導体やピロリジン誘導体が得られることが判明した。エン部に置換基がなくて, 他の部分が実施したエン反応基質と同一構造の基質のエン反応を試みたが, 同じ反応条件下反応が進行しなかったので, エン部の置換基は, 遷移状態に置いて成長する電子欠損炭素を安定化するものと考えられる。従来, "親エン部"の活性化のためには, カルボニルエン反応であればルイス酸, 通常のエチニルエン反応であれば遷移金属錯体を用いる戦略が一般的であるが, "エン部"の活性化に関しては有効な方法が殆どない。従って, 本研究の成果の一つは, 遷移状態に置いて"エン部"に電子欠損炭素が成長する場合に, 今回の基質のように, 置換基導入よってその安定化を達成することが出来て, その結果、従来の合成法で得ることが簡単ではない化合物の入手を可能にしたことである。これらの情報に基づいて, 脳神経科学の分野で要求度の高い, 現在得難いことが問題となっている(一)-カイニン酸の全合成を計画し成功した。これらの成果に関する論文は現在作成中である。
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