研究概要 |
共役系の電子構造制御による多機能階層の創製を目的とした電子構造に段差を有する次世代ナノ共役系の構築として, 前年に引き続き以下の研究を遂行した。 多分岐型オリゴチオフェンが高い溶解性にもかかわらず強い自己会合特性を有し, 薄膜状態で良好な正孔キャリア移動度を示したので, 分岐構造の複数の末端に電子キャリア担体としてアルキル基の導入で溶解性が確保でき, πスタックに好都合な平面性と高いアクセプター性を有するペリレンビス(ジカルボキシイミド)ユニットの導入を行った。蛍光スペクトルではオリゴチオフェン部励起, ペリレンビスイミド部励起, いずれの場合も蛍光強度の著しい減少が観測され, 効率的な光誘起分子内電子移動を示唆している。また, ^1NMRスペクトルの濃度依存性から, 中央部が8T化合物の二量化会合定数は3387M^<-1>と高く, MALDI-TOF MSでも会合に由来するピークが観測された。スピンコート薄膜をITOとアルミニウム電極でサンドイッチした有機単層素子を作製して可視光に対する光電変換機能を評価したところ, 外部量子収率は, 分岐を持たない直鎖の比較化合物に比べて一桁以上向上して, 多分岐型に由来する薄膜での会合が大きく寄与していることが示唆された。過渡吸収-マイクロウエーブ伝導度測定では, 対応するラジカルアニオンおよびラジカルカチオン種の生成が確認され, キャリア移動度は1.3×10^<-2>cm^2V^<-1>s^<-1>の高い値が観測された。
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