研究概要 |
情報爆発的な現代社会においては, 生体情報を利用した本人認証システム, いわゆるバイオメトリクス認証技術が重要視されている. そこで, 既存技術に代わり, 新たに究極の生体情報としてDNA情報を用いたバイオメトリクス認証技術の開発が本研究の目的である. しかしながらDNA情報を利用するためには, 検査時間と倫理的な側面という解決すべき大きな問題が残されている. 我々は近年注目されているsingle nucleotide polymorphism(SNP, 一塩基多型)マーカーを用い, 認証に適したSNP部位の検索とその検査時間短縮, およびDNA情報の暗号化を図ることで, 絶対的とも言えるDNAバイオメトリクス認証への利用を検討した. 昨年度われわれは最新のSNP解析方法の1つであるFast TaqMan[○!R]法を用いて, 常染色体上SNPデータベースを構築すると同時に, 30分以内で検査工程を確立した, 本年度は識別精度の向上, 新たなデータベースの構築および充実, 情報分野での具体的な応用例の検討が目的である. SNP1座位の識別精度は低いが, 複数の座位を検査することにより識別精度を向上させている. これまでは一度に24座位の解析が限界であったが, Microsoft[○!R]EXCELを用いた新たなスプレッドシートを本研究で開発したことにより, 一度に96座位のSNP解析が可能となった. その結果, 識別精度は飛躍的に向上し, 同値確率は10^<-41>となった(指紋は10^<-3>, 虹彩は10^<-6>程度). また, 母系遺伝形質を持つミトコンドリアDNA(mtDNA)のSNP(mtDNA-SNP), さらには男性だけが持つY染色体上のSNP(YSNP)の解析を行い, これらのデータベースを新たに構築した. これにより母系の確認, 人種の推定が可能となった. さらに常染色体上SNP30座位の解析を新たに行い. データベースの充実を図った. また, 情報分野での具体的な応用モデルとして, DNA情報によるキャンセラブル識別子の提案を行い, 絶対的とも言えるDNAバイオメトリクス認証技術のモデル化を検討した.
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