研究概要 |
近年, モデル構築の複雑さの爆発という情報爆発に関する問題に対処するため, 観測データからシミュレーションに基づいて自動的にモデリングを行うシミュレーションベースモデリング(SBM)が注目されている. 現在, SBMのための最適化手法として遺伝アルゴリズム(GA)が有望視されているが, 計算時間の爆発という新たな情報爆発に関する問題に直面している. グリッド計算環境でGAを高速に実行するためのシステム基盤として, 昨年度はGbGA Framework 2の設計, 実装を行った. 本年度は, 社会科学/生命科学の領域専門家がシングルCPU環境からグリッド環境までシームレスに利用可能な環境の構築を目指して, GOGA Framework 2の上にシングルCPU環境用GAライブラリとそのグリッド化モジュールを構築し, 実アプリケーションへの適用を行った. シングルCPU環境用GAライブラリは, Javaベースのオブジェクト指向フレームワークであり, 非常に拡張性に富んだ柔軟性の高いライブラリとなっている. 標準的な交叉や世代交代モデルを提供しているが, 利用者は, 交叉, 世代交代モデル, 問題などの独自に開発したモジュールを組み込むことにより, 容易にライブラリを拡張することができる. また, 複数のパラメータについて乱数系列を変更して複数試行を行い, 結果を統計処理するといったSBMにおいて典型的なワークフローもサポートしている. GAライブラリのグリッド化モジュールは, シングルCPU環境用GAライブラリをグリッド上で並列分散実行するためのモジュールである. 設定ファイルを差し替えるだけで, 任意のGAについて試行, 個体評価のレベルで並列分散化を実現できる. また, 世代交代モデルに依存する形であるが, 世代交代についても並列分散化するためのモジュールも提供している.
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