研究概要 |
本研究では, 人工物に関する基盤的なオントロジーを核とした工業製品関連知識の融合と, オープンな相互運用性の実現を目指した. 平成20年度においては, まず, 実施計画項目(1)の設計プロセスとの関連性について考察し, 人工物の機能の存在の様相について考察を行った. その結果, 設計前や設計後における機能が, 実体としての機能を規約する「仕様」として存在することを明らかにし, 実際に使用される機能との関係性を明確にした. また, 製造行為との関連についても考察を行い, 製造行為の結果として存在する機能は,(機能的な)人工物が持つ性質の一種である「機能を発揮する能力」として存在することを明らかにした. このように, 本年度では人工物に関連する各種プロセスにおける機能の捉え方の融合のために, 機能のオントロジー的分節化を行い, 工学行為との関係性を明らかにした. 次に, 実施計画項目(2)の機能語彙体系の分類軸に関する考察を行った. まず, 昨年度から進めてきたFunctional Basisとのマッピングに関する考察をさらに進め, 双方向のマッピングを確立すると共に, そのマッピング結果について詳細な分析を行った. 機能に関する参照オントロジーにおける上位概念クラスの違いとマッピングによる意味の対応関係に基づいて, マッピングのパターンを分類した, また, 語彙体系間の語彙の粒度の違いと相互カバー率や, マッピングの成功率について考察を行った. その結果, 両語彙体系は独立に開発されたにも関わらず, 高い類似性を持っていることが明らかになった. このことは両概念体系の妥当性を示唆するものと言える. このようなマッピングに関する考察に基づいて, さらに, それぞれの語彙体系を構成する分類の基準(分類軸)を明確にし, 語彙体系の構造の違いを明らかにした.
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