研究概要 |
当初予定していた研究目的の一つである、粒界近傍の転位の状況ならびに結晶粒界の転位の運動・分布,応力分布について、分子動力学法を用いた数値計算シミュレーションによる予測が可能となった。Cent ro Symmetry Parameter法やCNA法などのポストプロセッシング手法を駆使して計算結果を可視化することが効率的に行えるようになった。支配的と考えられる情報に基づいたモデルを構築するまでには至らなかったが,結晶粒界や1nm程度の微小な格子欠陥が結晶粒に含まれる場合,結晶粒のサイズによってはこれらの粒界や欠陥が転位の生成源・消滅点となる場合があることがシミュレーションから判明した。こうした微小な格子欠陥を最適に配置することができれば、微細粒金属の延性向上につながる可能性があり、巨大ひずみを導入した材料が抱える強度と延性の両立という課題を克服する上での重要な成果と考えられる。成果については、計算工学会、米国材料学会で発表を行った。平成22年夏の国際学会PRICM7への投稿論文が査読の結果受理された。また、Scripta Materialiaへの投稿に向けて執筆中である。特定領域研究であったため、同一研究班内はもとより、他の研究班のメンバーとも意見交換が行えたことは大きな資産となった。なお、20年度夏に筑波大学の並列分散処理計算機の廃止が急に決定されたため,代替手段として独自に4コア×8台のMPI並列計算機を構築した.現在も実用的な速度で計算が遂行可能である。
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