研究概要 |
巨大ひずみの機構解明に資する空孔型欠陥の二次元分布計測を目的とした。陽電子は空孔型欠陥の直接的な高感度プローブであるが, これまではバルクの平均情報を与えるにとどまっていた。本研究では, 陽電子を局所分析可能なプローブとしてマイクロビーム化を実現し, ひずみを負荷した試験片の二次元空孔分布を計測することにより塑性変形や強度に関しての機構解明に資する。 線源を22Naとした陽電子ビームは独自のマイクロビーム化技術を用い, かつインレンズ型対物磁界レンズによる二次集束により, ビーム径100μm以下で試料に入射される。ビームを試料上に走査して消滅γ線をGe半導体検出器で検出し, Sparameterの試料位置依存性を求める。鉄に対する24.5keVの陽電子の平均の注入深さは950nmである。圧延した高純度鉄(99.997%)を800℃で焼鈍することにより空孔を除去し, 破断まで引っ張ったもの(破断までの変形量約20%)を試料とした。くびれ部でS parameterが引張応力に対応して増加し, 空孔型欠陥(主として転位)の発生が認められた。一方で, 破断部近傍0.1mm領域でS parameterの急激な増加が観測された。その結果は, 破断部には空孔型欠陥の凝集が生じていることを示唆している。 本研究では, 初めて局所的な空孔分布を計測することができ, これは巨大ひずみが局所的に形成されるボールミル加工材や磨耗材の評価に利用することができることがわかった。今後, 巨大ひずみ材料に本法を応用し, 空孔の挙動や制御を考察していく予定である。
|