研究概要 |
Fe-33mass%Ni合金への熱処理によってγ相のみを有する試料(試料1)およびα'相とγ相の両方を有する試料(試料2)を作製し, 摩耗という巨大ひずみ加工によって形成する表面近傍の組織変化および摩耗特性について調べた. その結果, 摩耗表面に最大で厚さ約50μmの摩耗変質層が形成していた. この変質層は, 試料1と試料2の両方に形成されていた. さらに, EBSD法による組織観察結果から, 摩耗変質層に近づくにつれて結晶粒径が微細になることが分かった. また, 試料2における変質層およびその近傍ではα'相が観察されず, γ相単相となっていた. 試料2における摩耗表面近傍では, 摩擦熱によって逆変態が生じた. Fe-33mass%Ni合金の逆変態温度は200℃であるので, 摩耗表面近傍において摩耗中に200℃以上の摩擦熱が発生し, 同時にγ相結晶粒が微細化するといえる. さらに, ビッカース硬さ試験の結果から, 試料1における摩耗変質層の硬さは, 他のγ相領域の硬さに比べて高いことが分かった. 一方, 試料2においても変質層の硬さは他の領域に比べて高かった. これは, 摩耗変質層におけるγ相結晶粒微細化に起因すると考えられる. それゆえ, Fe-33mass%Ni合金への摩擦摩耗はα'相の有無に関わらず摩耗表面の硬さを向上させる効果を有することが分かった. Cu合金や鉄鋼材料の様な変形抵抗が高い材料あるいはhcp金属のECAP加工は困難である. 強制的に加工を行うと金型が割れるなどの重大なる事故が引き起こされるが, 柔らかい材料の中に難加工材を挿入することでECAPが可能であることを見いだした.
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