研究概要 |
繰り返し重ね接合圧延(Accumhlative Roll-Bonding, ARB)法により純度99.99%のアルミニウムに強加工を施し, ヴィッカース硬度, 低温における直流電気抵抗, 微小振幅での動的弾性率スペクトルを測定した.従来の研究では, 強度は加工度とともに上昇するが公称ひずみの値が2から3で極大となり, 以後はほぼ一定となること, その強度の変化は結晶粒径とほぼ対応していることが知られていた. 今回の実験では硬度測定によりそれを確認したが, 電気抵抗は加工度とともに緩やかに上昇を続け, 格子欠陥の密度はひずみ5を超えても増大していることが分かった. 動的弾性率測定で得られる力学損失の値からも, 同様な格子欠陥密度の加工度による増大が示唆された. 温度を走査して行った動的弾性率測定では, ひずみが5を超える超強加工を施した試料で, 加工温度である室温よりも温度を上げると試料が自発的に変形することが見出された.これは, 加工により導入されて不安定な状態にあった大量の格子欠陥(主としてすべり転位)が温度の上昇とともに安定構造に再配列することに起因すると考えられる. 以上のように, 従来の研究では高純度アルミニウムでは室温での加工による効果はひずみが3程度で飽和すると思われていたが, より強い加工により格子欠陥は増え続けていることが明らかとなった. また, 加工した純アルミニウム試料に等時焼鈍と等温焼鈍を施し, 回復挙動を調べた. 超強加工した試料では室温から温度を上げるとかなり速い段階から回復が起こることが見出された. そのカイネティクスは単一の時定数では表し難く, 解析方法を今後詳しく検討する必要がある. 高純度鉄について, 同様な手法によって格子欠陥生成・組織変化と力学特性の変化に及ぼす影響を調べる研究を開始した, この研究は今後も継続する.
|