研究概要 |
形状不変加工プロセスを用いて巨大ひずみ加工を施した材料は, 強度と延性の相反する機械的特性を同時に有する. その優れた機械的特性の起源の一つとして, 結晶粒界の存在が多くの研究者によって指摘されており, 結晶粒界を種々の観点から調査することはその特性理解の足がかりとなることが予測される. 本研究では, 昨年度に引き続き, 繰り返し重ね圧延接合法(ARB)を施した工業用純アルミニウム(1100Al)の粒界構造を原子レベルで解析すると共に, 結晶粒界近傍の異種元素偏析挙動を透過型電子顕微鏡(TEM)並びにエネルギー分散分光法(EDS)を用いて調査した. 圧延方向に平行なラメラ粒界を観察したところ, 傾角が125.9°および70.5°の大角粒界を原子レベルで観察することに成功した125.9°粒界はFCC金属のsΣ11対応粒界(傾角:129.5°)に近くΣ11対応粒界を構成する基本構造ユニットに類似したカイト形状を有していることも明らかにすることができた. 併せて, その傾角の差は転位で補償されていることを確認したが, その転位は通常の候角差を補償するDSC転位のような微小なバーガースペクトルではなく, FCC金属の完全転位であることを明らかにし, これは加工に伴い格子転位がラメラ粒界の形成に寄与していることを示唆する結果を得ることができた. 一方, 傾角が70.5°のラメラ粒界はナノオーダーのΣ3双晶や積層欠陥のファセット化によって, マクロには非対称粒界を形成していることがわかった. 一方, 異種元素の偏析挙動については, Al-0.5at%X(X=Si, Ag, Mg)合金の粒界偏析挙動をTEM-EDSにより調査し, Siのみ強い粒界偏折を示したものの, AgおよびMgに関しては粒内への固溶も認められた.
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