研究概要 |
我々は、herringbone型のパッキング構造をとってしまうペンタセンにメチルチオ基を導入した6,13-ビス(メチルチオ)ペンタセン1が、硫黄原子間相互作用を補助的駆動力として働き、ペンタセン環がface-to-face型π-πスタッキングすることを見出している。本研究では、このコンセプトを確立すべく、ビス(メチルチオ)テトラセンを合成し、単結晶X線構造解析を行い、結晶構造パッキング構造を調べた。 [1]5.12-ビス(メチルチオ)テトラセン2 5、12-ビスメチルチオテトラセン2は、5,12-テトラセンキノンから3段階で合成した。X線結晶構造解析を行った結果(空間群C2/c)、2のパッキング構造にはS…S相互作用とS…Cπ相互作用が働き、2のテトラセン環はface-to-face型π-πスタッキングしていることがわかった。また、溶液塗布法によりボトムコンタクト型の有機トランジスタ素子を作成し、有機電界効果トランジスタ特性の測定を行ったところ、2はp型半導体でμ=4.0x10^<-2>cm^2/V_s、I_(on)/I_(off)=1.0x10^4,V_(th)=-1.7Vという性質を示した。 [2]5.11-ビス(メチルチオ)テトラセン3 5,11-ビス(メチルチオ)テトラセン3は、テトラセンキノンから3段階で合成した。3の結晶構造(空間群pbca)にはS…S相互作用はなく、そのテトラセン環は典型的なherringbone型パッキング構造をとっていた。 以上、我々のこれまでの知見と今回得られた結果を併せ、berringbone型パッキング構造をとるアントラセン、テトラセン、ペンタセンにメチルチオ基という小さい官能基を導入することにより、硫黄原子間相互作用が補助的に働いて、アセン環のパッキング構造をface-to-face型π-πスタッキング様式に分子配列制御できることがわかった。また、硫黄原子間相互作用に加え、分子の対称性も重要であることがわかった。
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