研究概要 |
2,6-ジカルボキシピリジン(dcpy)は、三座のキレート配位子として、多くの金属錯体の合成と単離に広く利用されてきており、例えばこの配位子を有するコバルト錯体[Co(dcpy)_2]^<2->ほよく知られている。一方、このdcpyにヒドロキシル基を1っ導入した2,6-ジカルボキジ-4-ヒドロキシピリジン(dchpy)を用いると、同様の構造を持つコバルト錯体は不安定となり単離できない。代わりに既知化合物である[Co(dchpy)(H_2O)_3]か、カルボン酸が単座で配位じた[Co(Hdchpy)_2( OH_2)_4]が生成する。つまり、dchpy、がキレート配位した単核のコバルト錯体は安定に単離することが困難であり,この原因は明らかにされていなかった。本研究では、このこれまでは単離できなかった[Co(dchpy)_2](2-)を、7核ユニットに組み込むことにより、これらの不安定化学種を安定化させ単離することに成功し、さらに、その単結晶構造を元にした分子軌道計算から,単核[Co(dphpy)_2]^<2->種の不安定化される重要な因子として、コバルト中心の正電荷の増加に原因があることを突き止めた。 また、さらに新しい不斉金属錯体配位子を有する多核金属錯体として、歪んだ金属中心を持つ銅(II)シッフ塩基錯体に2つのホスフィンが導入された不斉ユニットにCu_2Cl_ 2ユニットが結合した銅四核錯体を合成することに成功した。この金属錯体のユニークな特徴として、不斉ユニットであるシッフ塩基にキレート配位された銅中心とホスフィンにキレート配位された銅中心のCu(II)/Cu(I)の酸化還元電位が、それぞれ、-486mVと-474mV(vs.SCE)と、全く異なる電位に観測されることを見いだした。
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