研究概要 |
我々は数ナノメートルの大きさ(=ナノサイズ)の配位圏を有する遷移金属錯体に興味を持ち,これらの触媒が従来にない触媒活性と選択性を示すことを明らかにした。これらナノサイズ錯体には,触媒(金属)中心から1nm以上離れた部位が存在し,触媒中心に種々の影響を与える。本研究では長鎖アルキル(n-C12)基および長鎖親水基(テトラエチレングリコール:TEG)基を有する含窒素複素環カルベン(NHC)配位子を設計・合成し,触媒反応に用いた。ベンジル基の3,4,5-位にn-C12およびTEG基を有する部位を有するNHC配位子を設計した。また,比較のために長鎖基のない部位も導入した。その結果,両側に長鎖親水基を有する配位子,片側に長鎖親水基および疎水基を一つずつ有する配位子,両方に長鎖疎水基を有する配位子,長鎖基を有しない配位子を設計した。対応するイミダゾール塩の合成は塩化ベンジル誘導体とイミダゾールとの反応により行った。非対称の塩は,対応する塩化ベンジルを逐次的に反応させることにより高収率で得られた。これらを配位子として有するロジウムNHC錯体は対応するNHC-Ag種からのカルベン移動反応によって合成した。これらのロジウム錯体を用いてケトンのヒドロシリル化反応を行ったが,特に長鎖置換基の影響は認められなかった。そこで次に鈴木-宮浦反応を行った。触媒として,[PdC1(η3-C_3H_5)]_2,KOtBuから系中で調製した触媒を用いた。2-ブロモ-1,3-ジメチルベンゼンを基質として反応を行ったところ,TEG基を有するものを配位子として用いる触媒では,生成物を96%,92%と高収率で与えた。
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