研究概要 |
本研究では,多様な置換基を有するピラゾラト配位子が架橋した白金-(銅/銀/金)錯体を合成し,発光特性を調べるとともに,異種金属間の相互作用がどのように発光に関与しているかを明らかにすることを目的としている. 本年度は,段階的合成法により3,5位にメチル基を有するピラゾラト配位子(Me_2pz)を用いてPt^<II>イオン2,Au^Iイオン2,Ag^Iイオン2またはCu^Iイオン2,およびジメチルピラゾラト配位子(Me_2pz)8の比からなる多核錯体[Pt_2Au_2M_2(μ-Me_2pz)8](M=Ag,Cu)を合成し,発光特性を調べた.Me_2pzが配位した白金二量体にAg^IイオンやCu^Iイオンを反応させると[Pt_2M_4(μ-Me_2pz)8](M=Ag,Cu)が選択的に生成するが,Au^Iを反応させた場合には[Pt_2Au_2(μ-Me_2pz)_6(Me_2pzH)_2]が生成し,分子内に4個Au^Iを含む錯体は得られない.しかし,この特徴は,分子内に3種類の金属イオンを含む混合金属錯体を合成する上では有利に働き,Pt_2Au_2錯体とAg^IイオンおよびCu^Iイオンとの反応により[Pt_2Au_2M_2(μ-Me_2pz)_8](M=Ag,Cu)の合成に成功した.Pt_2Au_2Ag_2錯体およびPt_2Au_2Cu_2錯体はPt_2Au_2錯体の立体配置(Pt_2Au_2M_2(M^I=H^+,Ag^I,Cu^I)がつくる八面体を考えた場合にcis配置)保持しており,異性化は見られない.また,Pt_2Au_2Ag_2錯体およびPt_2Au_2Cu_2錯体は,分子内にAu^Iイオンを含むことにより,[Pt_2M_4(μ-Me_2pz)_8](M=Ag,Cu)とは異なる色調の発光を示す.Pt_2Au_2Ag_2錯体およびPt_2Au_2Cu_2錯体は,ブラックライトを照射すると固体状態でそれぞれ水色(495nm)およびオレンジ色(598nm)に発光した.これらの錯体は,発光をプローブとすることで,3種類の金属イオンの相乗効果が明確に観測された初めての例であると思われる.
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