研究概要 |
ジビスムンBi-Bi単結合を持つ化合物)は,結合エネルギーの小さいBi-Bi結合の開裂を利用して種々の含ビスマス元素間化合物の合成原料としての利用が期待される。また,有機合成反応剤としても興味深い化合物である。しかし,これまで報告されているジビスムチンの多くは安定性が低くその利用は極めて限定されていた。本研究では安定性の高い環状骨格を有するジビスムチンの全く新しい合成法について詳細な検討を行った。 安定性の高い環状構造であるアザビスモシン骨格を有するビスマスオキシドとPh_2P(0)Hとの反応を検討する過程でジビスムチンが生成することを偶然見いだした。この反応の進行は遅く,1ケ月後の単離収率は48%であった。そこで,種々のリン化合物を用いて反応を検討したところ,P(0)H構造が重要であることが分かった。特に比較的安価に市販されている同構造を有するDOPOを用いジオキサン中で反応を行うと,1-16時間程度で反応は終了し高収率(最高で94%)でジビスムチンが得られることを見いだした。 このジビスムチンは,予想通り高い安定性を有しており,窒素下では180℃程度までは分解せず,固体状態では少なくとも数時間空気中に放置しても変化は見られなかった。一方でこのジビスムチンのBi-Bi結合は従来報告されているジビスムチンと同様に高い反応性を有しており,溶液中では酸素や硫黄と速やかに反応しBiOBiやBiSBi構造を有する化合物を定量的に与えた。この新規合成法の反応機構に関し検討した結果,二種類の中間体の単離・構造決定に成功した。本反応は,従来報告されているジビスムチン合成法とは全く異なる機構で進行しているものと考えられる。 この新規合成法では生成物を濾過という単純な操作で単離することが可能であり,アザビスモシン骨格を有するジビスムチンの有用な合成法であるといえる。
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