研究概要 |
一つのフラスコ中でいくつかの反応が一挙に進行する多段階反応は,省資源化へとつながり次世代の「環境調和型分子変換プロセスの開発」という観点からも注目されている.遷移金属触媒を用いてこのような多段階反応を実現するためには,1)一種類の触媒によって複数の反応を進行させ得る「多機能触媒」の創製,あるいは,2)複数の触媒が互いの機能を損なわずに共存し得る反応系の開拓,が必須である.本研究課題では,上記1)の実現を目指し,多機能分子である含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)の利用に焦点をあて研究を進めた.MHCは,カルボニル化合物を反応し極性転換を引き起こす「有機分子触媒」としての機能と,遷移金属触媒に配位する、「配位子」としての機能を併せ持つ.そこで本年度の研究として,これらの機能を活用した「極性転換型辻-Trost反応」や「一酸化炭素挿入反応-Stetter反応カスケード」などの検討を行った.NHC前駆体として種々のイミダゾリウム塩を合成し上記の二つの反応系での利用を試みたが,現在までのところ,「有機分子触媒」としての機能と「配位子」としての機能を併せ持つNHC分子の創出には至っていない.今後は更に様々なイミダゾリウム塩,及びその類縁体であるトリアゾリウム塩やチアゾリウム塩を合成し,更に上記の二つの反応系において機能を検討していきたい.また,上記2)の「複数触媒共存系」の開発にも着手したいと考えている.
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