研究概要 |
複合金属酸化物中での金属イオンの規則配列に伴う新たな協奏的触媒機能の発現を目指し、ダブルペロブスカイト(AA'B^<2+>B'O_6;A,A'=Ba,Sr,Ca,La;B^<2+>=Co,Ni,Cu,Zn:B'=W,Ta,Nb,Ti)の合成、粉末X線回折、リートベルト解析による結晶構造解析、および光学的バンドギャップ(Eg)測定と光触媒活性について検討した。 Bサイト金属イオンの価数差(Δ)が4価(B^<2+>-W^<6+>)、3価(B^<2+>-Ta^<5+>, Nb^<5+>)、2価(B^<2+>-Ti^<4+>)となるダブルペロブスカイトを設計し、固相反応法により合成した。X線回折パターンより、Δが4および3の化合物は完全な規則化構造をとり、立方晶(Ba_2B^<2+>WO_6、LaBaB^<2+>TaO_6、LaBaB^<2+>NbO_6)は超格子線の存在から、正方晶(Sr_2B^<2+>WO_6:B^<2+>=Co,Ni,Cu)は(l01)面などの回折線強度から規則化構造を判断できることがわかった。一方、斜方晶や単斜晶系の規則化構造の判定にはリートベルト解析が不可欠であること、Δが2の場合には規則化が不完全で、例えば単斜晶系のLa_2ZnTiO_6では90%の規則化率であることを明らかにした。 合成した試料のEgは1.7-4.8eVで、B'イオンに強く依存することを見出した。紫外光を用いた水溶液系におけるメタノールの光還元によるH_2生成反応、Ag^+光還元反応を行ったところ、前者の反応には全ての触媒が不活性であった。一方、後者に対してはLa_2ZnTiO_6(Eg=3.91eV)のみが特異的に活性を示し、その表面積当りの比活性はTiO_2(Eg=3.2eV)の約3倍であり、La_2ZnTiO_6は光照射による電荷分離能を有し、励起電子の還元力はTiO_2より高いことがわかった。また、W系ダブルペロブスカイトは反応条件下で分解し、溶液中での光触媒としての利用は困難であることがわかった。
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