研究概要 |
栄養塩・溶存酸素についての全球グリッドデータを作成した. 格子間隔は水平1度で深度1000mまでの18層, 時間解像度は月毎であり, 1930年より現在までの期間をカバーしている-グリッド化の手法はガウス関数によるスムージングである. このグリッドデータセットは栄養塩については初めての, また溶存酸素についても先行研究以上の範囲をカバーするものであり, このデータセット作成の意義は大きいと言えよう. 本データセットは, 観測がない場合は欠損として扱っているが, 日本付近は世界でも最も欠損が少ない領域となり, 本データセットは世界で最も充実している日本付近の栄養塩・溶存酸素観測を, 簡単に解析することを可能とするものである. このデータセットを用いて, 地球温暖化によって生ずる可能性があるトレンド成分を同定したところ, 日本の付近に顕著な栄養塩の減少トレンドが生じていることが見出された. またpHについては, 元データとして用いているWorld Ocean Database 05のデータの信頼性が不十分であることが明らかになった. すなわち, 同データベースにはpH測定に関するスケール情報と, 基準水温情報がほとんど示されていない. 測定スケールの大部分はNBSスケールであることが期待されるが, 基準水温については現場水温か25Cあるいは他の水温であるかでpHの値が大きく異なり, この基準を統一する形でWorld Ocean Database 05のデータを解析することは不可能である. そこで, JODCで公開されている気象庁のpHデータを解析した. その結果, 一般に予想されているpH低下と, 大きな矛盾のない結果が得られた.
|