研究概要 |
光フィードバック下の液晶光バルブは, ある環境で液晶の傾き角に双安定性が生じて様々な自己組織化構造が出現する。今年度の本研究では, 回転光フィードバック下で出現する花弁状自己組織化パターンが電圧の増加に伴って不安定化する過程をKarhunen-Loeve(KL)展開によって解析した。また, 干渉型光フィードバック下で出現するスポットパターンの生成過程を数値シミュレーションで調べた。その結果を以下に示す。 KL展開では, 観測した動画像を互いに相関の無い動画像群に分離する。この動画像は, 振幅, 時間固有関数, 空間固有関数の積で構成される動画像成分を積算したものである。振幅は特異値とも呼ばれ, その2乗(固有値)がn番目のKLモードのエネルギーに対応する。固有値の展開番号に対する減少の仕方から, 動画像の揺らぎの複雑性を評価した。電圧が1.87V<V<2.06Vの静的な花弁状パターンの領域では, 殆ど最初のKLモードにエネルギーが集中しているが, 2.06V<7になると上位のモードのエネルギーが徐々に増えてくる。全てのモードのエネルギー和で固有値を規格化した相対固有値用いると, n番目までのモードを使って再構成した動画像と元の動画像との相関値と, 揺らぎの複雑陸を定量化する大域エントロピーが相対固有値から計算できる。その結果, この時空揺らぎは, およそ20個程度のKLモードに情報が集中する, 大域エントロピーは0.5程度の相関の強いゆらぎであることがわかった。 光フィードバックにおいてレンズの結像位置をずらすと光の回折が起こり, 回折光の干渉によって孤立した点状ドメインが形成すると考えられている。そこで, 現象論モデルに基づく数値シミュレーションで出現条件を探索した。入射光強度を一定にし, 回折が起きる長さと電圧を様々に変化させて出現するパターンを調べたところ, 狭い電圧範囲ではあるが複数の電圧範囲で点状ドメインが形成することがわかった。
|