研究概要 |
極低温中性子を用いた低エネルギーでのT-odd非対称性測定の実験データを、理論的に分析するための基礎として超対称性理論を念頭に置いているが、まずその準備としてtwo-Higgs doublet模型における精密測定実験の制約を研究した。既存のLEPやTEVATRONのデータでは、top quarkの質量が171-172GeVと、従来よりもやや低目になりつつある。一方でビッグス粒子の質量の下限は現在のところ114 GeVである。そこで標準模型ならびにtwo-Higgs doublet模型での輻射補正の計算結果を用い,これらの制約が現在どこまで許されるかを計算機で調べた.計算は,1980年のMarciano-Sirlinのやり方を踏襲し、さし当たり1-1oopの範囲内でQCD補正は無視した解析を行った。その結果,標準理論ではすでにtop quarkの質量とHiggs粒子の質量の下限は両立し難い状況にあることが明らかになった。一方two-Higgs doublet模型で,2個のCP-evenのヒッグス粒子の質量をほぼ同じであると仮定して,荷電ヒッグス粒子とCP-oddのヒッグス粒子の質量が許容される領域を計算機で探索した。その結果、これらの粒子の質量が許容される領域に特徴的なパターンがあることが分かり、またその領域は現在の実験データからは強い制限を受けないものであることも分かった。これらの知見は、極低温中性子崩壊のT-odd非対称性を分析する際のパラメータの設定に大いに役に立つと期待している。
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