研究概要 |
多重重力レンズ効果を考慮して「光度赤方偏移」関係を調べ,「角度距離-赤方偏移」関係を求めた。今回の研究では,重力レンズ天体を全て同じ質量M_Lの質点レンズとし,赤方偏移z〓5,立体角40"x40"の空間内(観測領域)にN_L(=10^2,10^3,10^4,10^5)個のレンズ天体(N_LM_L=一定)を一様に分布させ,これらのレンズ天体からの重力の効果を全て考慮して光源の明るさを求め,これより光源までの角度距離を求めた。実際には同じ赤方偏移の多くの光源に対して,光源から観測者までの光の道筋を多重重力レンズ方程式を使って追跡し,個々の光源の見かけの明るさより個々の光源まで距離を求め,更に統計処理を行うことによって得られた「角度距離-赤方偏移」関係と従来の一様等方宇宙で期待される関係とを比較した。その結果以下のことが明らかになった。 1.平均の「角度距離-赤方偏移」関係は配置する重力レンズ天体の数N_L(∞/M_L)に大きく依存する。これは,「質点レンズを仮定した場合の平均の重力レンズ効果は,レンズ天体のM_Lには依存しない」という,従来考えられてきた単一重力レンズ効果の場合での結果と大きく異っている。 2.N_Lが大きいほど,平均の「角度距離-赤方偏移」関係は一様宇宙で得られる関係に近づく。これは,密度パラメータを一定にしたままレンズ天体の数を無限大にする連続極限において,非一様宇宙(pyer-Roederのclumpy宇宙)モデルで得られる平均の「角度距離-赤方偏移」関係は一様宇宙モデルで得られる関係と完全に一致することを示唆している。
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