研究概要 |
酵母細胞内にamberサプレッサーtRNAとこれに非天然アミノ酸BPA(p-benzoyl-L-phenylalanine)をチャージできるアミノアシルtRNA合成酵素(BpaRS)を発現させると, 目的タンパク質内のamberコドンで指定した位置にBPAを組み込むことができる。この細胞または細胞抽出液に紫外光を照射するとBPAと近傍のタンパク質間に架橋が形成されるので, 架橋産物の相手を同定すれば, 目的タンパク質についてどの位置でどんなタンパク質と相互作用しているかをマッピングすることができる。 この手法を酵母ミトコンドリア外膜のトランスロケータTOM40複合体構成因子Tom22に適用した。Tom22は一回膜貫通型タンパク質で, N端ドメインをサイトゾルに, C端ドメインを膜間部側に持つ。Tom22分子全体に5残基毎にBPAを導入し, 光架橋を行い, TOM40複合体構成因子および内膜のトランスロケータ構成因子の抗体を用いて, 架橋相手を同定した。Tom22のサイトゾルドメインはTOM40複合体の二種類の受容体, Tom70とTom20と相互作用していた。詳細なマッピングから, Tom22はTom20が認識する前駆体の行き先シグナルを別な角度からサンドイッチする形で認識している可能性が示唆された。Tom22の膜貫通ドメインはTOM40複合体の膜透過チャネルTom40と相互作用し, 複合体を安定に保っているらしいこと, 一分子のTom22は二分子のTom40と相互作用していることが分かった。さらに, Tom22の膜間部ドメインは内膜のトランスロケータTIM23複合体の受容体サブユニットTim50と相互作用していることが分かった。
|