研究課題
特定領域研究
タンパク質のフォールディングを助ける分子シャペロンであるシャペロニンGroELは細胞の生育に必須のタンパク質である。シャペロニンGroELはATPと補助因子のGroESの助けを借りつつ精妙に構造変化をしながらタンパク質のフォールディングを助けるという点で生体ナノマシンとも言え、その作用機構の理解はそのまま未だ不明な点が多いタンパク質のフォールディングの理解につながるという点でたいへん重要である。GroELは機能単位である「かご」状の7量体リングが背中合わせに2つ結合したダブルリング構造を取る。この2つのリングがATP加水分解にしたがって、交互に機能しながらはたらくというモデルが定着しているが、その詳細な分子機構にはまだ不明点も多い。昨年度までの本特定領域の支援による研究の結果、我々はGroELのダブルリング構造の意味を理解するためのいくつかの実験を行い、確定したと思われていた作用機構サイクルに間違いがあることを見出した。この結果は、J.Biol.Chem.誌が選ぶ「Papers of The Week」に選ばれたことからもシャペロン研究者をはじめとしたフォールディング研究コミュニティーに大きなインパクトを与えた。具体的には、GroELのダブルリングの両方に変性タンパク質が結合したままでサイクルが回ること、GroELのサイクル途上にてGroESが2つのGroELリングに結合可能であるということなどを見出した。これらは従来考えられてきたシャペロニンGroELの作用機構モデルと異なるものである。本年度は、一見等価に見えるフットボール複合体(2つのGroESがGroELダブルリングの両側にそれぞれ結合した複合体)がほんとうに等価なのかどうかを生化学的に明らかにした。
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