研究概要 |
骨格筋・心筋の収縮は細いフィラメントへのカルシウム・イオンの結合で制御されており、その標的タンパク質はトロポニンである。これまで, トロポニンの三者複合体のNMR分光を行い、トロポニンにはモバイル・ドメインの原子構造を解くことに成功し, この構造情報から筋弛緩の際のアクチン・トロポニン結合の原子モデルを構築した。このモデルによれば, トロポニンがトロポミオシンを押すことによって, アクチンのミオシン結合部位を覆うことが, 弛緩の分子メカニズムである。そこで, 本研究ではカルシウムがトロポニンに結合・解離する際のトロポニンおよびトロポミオシンの動きを動的に観察することを目的とした。まずトロポミオシンを大腸菌で大量発現・精製する方法を確立した。次いで、トロポミオシン全体にわたってほぼ均等に7箇所にシステイン残基を導入することに成功した。東北大学樋口研の協力の下でQドットアビジンを結合させてその動きを観察した。ケージドEGTAの紫外線照射によりカルシウムの濃度を下げると, Qドット蛍光は移動したように見えたが、紫外線照射の際の振動などのアーテファクトである可能性もあるので慎重に実験を繰り返す必要がある。またアクチンフィラメントがしっかりとガラス基板に結合できていない可能性も検討している。導入したシステインをビオチン化し、Qドット標識アビジンを結合させようとしたところ、その結合効率は、システインを導入した部位に依存して大きく異なるという予想外の結果も得た。
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