研究概要 |
植物では, 細胞周期にはじまり器官の形態形成といった様々な段階の生命事象が, 特定の標的タンパク質を能動的に分解することにより直接的に制御されている。高等植物には, このタンパク質分解の実質を担うユビキチン・26Sプロテアソーム系に関与する遺伝子群がゲノム全遺伝子の5%以上(約1,300遺伝子)も存在しており, 他の生物種と比較しても類をみないほど多い。これはゲノムワイドでみた高等植物の特徴の一つである。この事実は,植物がもつ優れた環境適応能力は, 上述のタンパク質の分解系を媒介とした環境シグナル制御系が一翼を担うとする仮説を裏付けるものである。今年度は, プロテアソームと機能性RNA形成機構との関係を中心に研究を進めた。 シロイヌナズナ19Sプロテアソームのサブユニットにおいて, RPT2bとRPT5aの2重欠損変異体では, 発育不全とともに, 緑葉がカールした。これは, 既報のhasty変異体と類似している。HASTYはエクスポーチン5遺伝子をコードし, pre-microRNAの核外排出に関与する。2重変異体を用いて詳細な解析を実施したところ, この変異体でもmiRNAの蓄積, 標的遺伝子の転写抑制の解除, 並びにpri-miRNAの蓄積が観察された。これらの結果から, この2重変異体では, miRNA形成に異常があることが明かとなった。現在, この現象の分子標的の探索を実施している。また, 環境変化によるプロテアソームサブユニット変換の検証を目的に、FLAG標識プロテアソーム導入シロイヌナズナの作成, FALG抗体によるプロテアソーム精製, 2D-PAGEによる各サブユニットの分離・タンパク定量, MS解析による同定を実施した。
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