研究概要 |
これまでの研究で、シロイヌナズナのbZIP型の転写因子、AtbZIP10の核-細胞質間移行がプログラム細胞死の誘導機構に関わること、及びAtbZIP10が微小管制御因子であるAtEB1と植物細胞中で相互作用することを明らかにした。もしAtEB1によりAtbZIP10の細胞内局在が制御されているのであれば、プログラム細胞死の誘導機構においてもAtEB1の機能が重要な役割を担っていると推測される。そこで、AtbZIP10の核-細胞質間移行制御機構とプログラム細胞死の誘導機構における、AtEB1の機能について総合的に明らかすることを目的として研究を行った。AtbZIP10とシロイヌナズナの3つのAtEB1間の植物細胞中での相互作用の特異性についてBiFC法を用いて調べた結果、AtbZIP10はAtEBIa,bとのみ相互作用を示した。またAtbZIP10の核-細胞質間移行におけるAtEB1の機能を明らかにするために、AtEB1遺伝子ノックアウト変異体を用いてAtbZIP10-GFPの細胞内局在分布の変化を調べた。その結果、3重変異体においてAtbZIP10-GFPの細胞質における蛍光シグナルの減少が観察された。それに対してAtEB1aの共発現により増加したAtbZIP10-GFPの細胞質における蛍光シグナルが、微小管脱重合阻害剤を処理した時に更に増幅されることを明らかにした。これらの結果から、AtEB1a,bとAtbZIP10の特異的な相互作用がAtbZIP10の核-細胞質間移行に関与すると共に、自身の機能が発現していると考えられる微小管のプラス端へとAtEB1が結合することがAtbZIP10の核-細胞質間移行に深く関与していると考えられる。まとめると、AtbZIP10の核-細胞質間移行過程においてAtEB1a,bは微小管プラス端でAtbZIP10と相互作用することで、その細胞質での局在をコントロールする機能を持つと示唆される。また、シロイヌナズナにおいてプログラム細胞死の一つである過敏感細胞死を誘導するフモニシンB1を用いて、プログラム細胞死の誘導機構におけるAtEB1の機能について調べた。その結果、AtEB1aの過剰発現体において細胞死の誘導レベルが上昇したことから、AtEB1の機能がプログラム細胞死の誘導機構に関与すると示唆された。
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