研究課題
特定領域研究
本研究では、(1)リステリア菌を認識し、排除する過程に、PGRP-LEが重要な役割を果たしていることを示すと共に、(2)PGRP-LEにより細胞内で認識されたリステリア菌が、どのような分子機構により排除されるのかを明らかにすることを目的としている。昨年度は、(1)リステリア菌に対する感染抵抗性の発現におけるPGRP-LEの関与について解析し、リステリア菌を認識し、排除する過程に、PGRP-LEが重要な役割を果たしていることを明らかにした。今年度は、(2)PGRP-LEにより細胞内で認識されたリステリア菌が、どのような分子機構により排除されるのかを明らかにするために、オートファジーに着目し解析した。オートファジーは、LC3蛋白質にGFPをつないだキメラ蛋白質(GFP-LC3)の挙動を追うことで可視化できることが知られている。まず、野生型のショウジョウバエ成虫から回収した血液細胞では、リステリアを感染させるとGFP-LC3のドットが観察され、オートファジーが誘導されることを確認した。そこで、PGRP-LE変異体から回収した血液細胞に、リステリア菌を感染させたところ、GFP-LC3のドットが観察されずに、オートファジーが誘導されないことがわかった。次に、リステリア菌を感染させたS2細胞では、PGRP-LE依存にリステリア菌の排除が誘導されるが、このPGRP-LEに依存したリステリア菌の排除は、オートファジー誘導に必要なAtg5のノックダウンにより抑制され、オートファジーによりリステリア菌の排除が起きることが分かった。さらに、Atg5をノックダウンしたショウジョウバエに、リステリア菌を感染させると、PGRP-LEの変異体と同様に、その感染抵抗性が低下することを分かった。これらの結果は、PGRP-LEはオートファジーを誘導してリステリア菌を排除することを示している。
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