研究概要 |
赤痢アメーバ症は発展途上国における小児下痢症の主要原因である。我々は動物モデル系を確立し、マウス系統によって感染成立・不成立の差異があることを見出した。骨髄キメラマウスを用いた研究から両系統間の差異は主として非骨髄細胞分画の違いに起因し、同原虫に対する腸管バリアには骨髄由来のIL-10が不可欠であることを明らかにしてきた。 本研究では、まず赤痢アメーバ原虫の腸管内定着および腸管上皮細胞への接着・貧食に重要とされるレクチンのリガンドGal/GalNAcの発現を両系統のマウス虫垂組織で比較した。赤痢アメーバから単離したレクチンはいずれのマウスの虫垂組織にも同程度に結合したので、同原虫レクチンが認識するGal/GalNAcの発現はマウス系統間で差がないことが示唆された。次に赤痢アメーバ原虫の感染成立・不成立を規定する因子に関して遺伝学的な解析を試みた。両マウスのF1では感染が成立しなかったことより、感染不成立の表現型は優性遺伝することが示された。さらにF1♀を感染が成立する♂マウスへ戻し交配して生まれた117匹のN2マウスを用いて感染実験を行ったところ、31%のN2マウスで感染率が成立した(♂42%、♀15%)。32のマイクロサテライトと118のSNPs、合わせて150のマーカーを用いた連鎖解析から、赤痢アメーバ原虫の腸管内定着を阻害する遺伝子座がマウス第1および2染色体上にあることが示唆され、その有意性はpermutation testでも確認された(Chr1 : rs3684370, 16, 188, 620 bp and Chr1 : rs3695988, 30, 064, 384 bp, 共にχ^2=10.39, P=0.0006、Chr2 : rs3662211, 129, 970, 691 bp, χ^2=7.00, P=0.0041)。
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