研究課題
特定領域研究
好熱菌Thermus thermophilus由来のV-ATPaseのATP合成反応を測定した。V-ATPaseの精製過程で複数の膜タンパク質が副産物として精製されてきたが、そのうちの一つである硫化水素の代謝に関係するPolysufide Reductaseの結晶構造を解明することができた。プロトン駆動力の負荷はacid-base transition法により行った。酸性緩衝液にV-ATPaseを再構成したリポソームを浸した後、塩基性の緩衝液に入れることによりpH濃度勾配(ΔpH)を負荷する。バリノマイシン存在下でリポソーム内外のカリウムイオン濃度勾配をつけることにより膜電位(Δφ)を負荷した。V-ATPaseにより合成されたATPは、ルシフェリンルシフェラーゼ系による燐光の測定により検出した。この方法により、リアルタイムATP合成活性測定が可能になった。ATP合成活性は、リポソームの作成法や酸性化に使うbufferの種類等に依存した。酸性化bufferに2塩基酸であるコハク酸やマロン酸を使用し、ΔpH=3.3, Δφ=118mVのプロトン駆動力を負荷した場合のATP合成活性は〜80sec^<-1>であった。1塩基酸であるMESを酸性化bufferに使用したときの活性値〜60sec^<-1>よりも高い。2塩基酸の膜間移動による膜電位発生によるとがえられる。膜電位の見積もりを正確にするために以後の実験には、MESを酸性化bufferとして使用した。膜電位が負荷されていない条件でもΔpH=>2.0で合成活性がみられ、ΔpHの上昇にともないATP合成活性も増加した。また、ΔpH=3の条件でΔφを負荷した場合、Δφの上昇に応じてATP合成活性も増加した。以上の結果からΔpHのみでもATPは合成され、ΔpHとΔφがATP合成活性に対して加算的に働くことが示された。次に反応液中のATP/ADP比が異なる場合でのATP合成活性を測定した。ATP合成に必要なプロトン駆動力(ΔpH+Δφ)の閾値を求め、ATP1分子の合成に必要なプロトン透過数(H+/ATP比)4.0±0.1が算出された。
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