研究概要 |
バクテリアにおいて、細胞質中で合成されたタンパク質の膜透過反応は、モータ因子SecA ATPaseと膜透過チャネルSecY/E複合体が中心的な役割を果たす。これらの因子は、互いに相互作用し機能していると考えらえるが、機能時のオリゴマー状態に関しては明確な結論が出ておらず論争が続いている。本研究では、SecA, SecYあるいは基質タンパク質proOmpAを蛍光標識し、それらをprobeとして用いた一分子計測を行う事により、この基本的かつ重要な問題に取り組んだ。計測感度を高める為、共同研究者の阪大・産研・野地研の協力を得て、全反射顕微鏡視野下において、平面膜中に蛍光標識膜透過装置を組み込んだ実験系を構築し、膜透過装置の一分子計測に初めて成功した。具体的には、1)材料とした用いたSecA, SecY, proOmpA分子全てを高純度に精製し、定量的に蛍光標識する実験条件を確定させた。2)各蛍光標識タンパク質が、野性型タンパク質と同様のタンパク質膜透過活性を保持していることを確認した。3)SecYEを組み込んだlipoosomeを平面膜へ融合させ、平面膜上の膜透過装置の動きとオリゴマー状態を初めて観察した。得られた結果から、平面膜上では、SecYEは単量体として存在していることが示唆された。SecAの添加により、SecYEの蛍光強度は増加する事が明らかとなったが、消光のパターンより、オリゴマー状態が変化したと考えるよりむしろ、SecA結合に伴いSecYEの構造変化が誘起された可能性が考えられた。「平面膜上のSecYEが実際に機能を保持しているか?」等、検討しなければならない事項はあるが、有用な測定系が確立できたと考えている。現在、更なる詳細な解析を進めている。
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