研究概要 |
イネではHWC2の対立遺伝子Hwc2-1とHWC1の対立遺伝子Hwc1-1との遺伝子間相互作用によって雑種弱勢が誘導される(雨宮と明峰1963). 私たちはこの2つの原因遺伝子について単離し、雑種弱勢のメカニズムを明らかにすることを目的に研究を行った, 連鎖地図を基にして遺伝子を絞り込み、それぞれの遺伝子について形質転換体を用いた実験を行った. その結果、Hwc1-1を形質転換することによって人工的に雑種弱勢が誘導できることが確認できた. またHwc1-1しか持たない1塩基多型を日本晴型の塩基に置き換えて, Hwc2-1を持つ日本晴に形質転換を行ったところ弱勢は誘導されなかった. このため, 弱勢が生じるためにはこの1塩基置換が必要であることが明らかになった. 一方, HWC2についてはHwc1-1を持たないイネへ候補遺伝子を形質転換した後, 交配によりHwc1-1を導入し雑種弱勢に関する相補性検定を行った. その結果, 交配によって得られた種子で通常の交配より激しい雑種弱勢が観察され, 候補遺伝子がHWC2であることが確認された. また, Tos17のミュータントパネルのうちHwc2-1候補遺伝子にTos17の挿入あるいはTos17のLTRの挿入がある複数の系統ではHwc1-1を持つ植物との交配で正常な個体が現れた。Hwc2-1の候補突然変異によって弱勢が生じないということからも候補遺伝子がHWC2であることが確認された. 弱勢を生じるHwc2-1のmRNAは弱勢を起こさないKatakutaraの対立遺伝子と1箇所にまとまった4塩基の置換があり, この変異によって2つのアミノ酸に置換が生じていた. この部分をKatakutara型に置換した形質転換体では弱勢が生じなかったため, この塩基置換はHwc2-1が弱勢を誘導するのに必要であることが明らかになった.
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