研究概要 |
対立遺伝子間の優劣性の原因として、一方の遺伝子の変異による機能欠損あるいは低下によるものが挙げられるが、それだけでは説明できない事象が多数存在する。本研究応募課題では、これまでアブラナ科植物の自家不和合研究で明らかにした対立遺伝子間の優劣性に関わるde novo DNAメチル化が植物の種々の現象か広く関与している可能性を考え、シロイヌナズナ種内雑種を例にして、優劣性現象の探索およびゲノムワイドなDNAメチル化、遺伝子発現パターンの解析を行う。平成20年度は、対立遺伝子特異的な発現調節の実態を網羅的に解析するための準備段階として、種々のシロイヌナズナの種内雑種を調製した。Arabidopsis thaliana Col-0株の雄性不稔系統(fkp-3、名古屋大学大学院生命農学研究科 石黒澄衛准教授より供与)を雌ずい側にして5つの異なる系統(C24,Cvi,Kas,Van,Sha)の花粉を受粉させて種々のF1雑種種子を作出した。また、予備的段階であるが、Col-0株およびC24株の実生からpolyA RNAを抽出し、シロイヌナズナゲノムタイリングアレイを用いたトランスクリプトーム解析に供した。同様に、Col-0株およびC24株の実生からDNAを抽出し、超音波で剪断したDNA断片を作成して抗メチルシトシン抗体で免疫沈降させた。これをシロイヌナズナゲノムタイリングアレイに供し、両株におけるメチル化パターンを解析した。 次に植物でも器官特異的なDNAメチル化の変動が見られるかどうかを明らかにすることを目的にCol-0株の花序、成葉、根について、メチローム・トランスクリプトーム解析を行った。また組織・細胞レベルにおける遺伝子発現様態、DNAメチル化パターンの解析を目的として、本年度購入したLaserマイクロダイセクション装置を用いたシロイヌナズナ柱頭乳頭細胞および葯タペート組織の回収およびRNAの抽出を行った.
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