研究概要 |
本研究者は以前に、脱ユビキチン化酵素AMSHの遺伝子欠損マウスを作製した。その結果, 同マウスが神経変性疾患を発症することを見出した。さらなる解析により、AMSH欠損マウスの変性神経細胞内にユビキチン化タンパクが蓄積していることが分かった。これらの事実は、脱ユビキチン化酵素AMSHが、基質タンパク質のタンパク分解を制御することにより、神経細胞生存・維持に重要な役割を担っていることを示唆する。また、申請者はAMSHのファミリー分子AMSH-LPを遺伝子単離し、AMSH-LPがAMSHと同等の脱ユビキチン化酵素活性を有することを見いだした。また, AMSH-LPが神経組織に比較的広範囲に発現することを確認した。そこで、AMSH-LP遺伝子欠損マウスを作成し, 神経系の異常について解析を行った。しかし, 1歳齢までの種々の週齢で解析を行ったが, 神経組織に明らかな異常は認められず, またAMSH欠損マウスの観察された神経細胞内にユビキチン化タンパク質の蓄積も認められなかった。また, 2歳齢まで観察を続けたが神経系の異常を疑わせる所見は得られなかった。さらに, AMSHとAMSH-LPの2重欠損マウスを作成したが, AMSHの単独欠損マウスに認められる所見と同程度の神経変性疾患様の症状と組織学的神経変性を認めるのみで, AMSH-LP欠損による疾患増悪効果は観察されなかった。従って, AMSH-LPは神経組織に発現するにも関わらずAMSHのような重要な機能を有しておらず, AMSHとAMSH-LPには機能的相違が存在するものと考えられだ。
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