研究概要 |
我々は、染色体の複製に必須なPCNAが、新たな機能として、Cu14-DDB1を含むユビキチンリガーゼとともに、Cdt1の分解に関わることを明らかにした。この分解系は、S期のみ機能する。また、UVなどのDNA損傷を受けたときにも機能する。PIP-ボックスを持つPCNA結合蛋白質は数多く知られている中で, 新規にCDKインヒビターp21がPCNA依存的に分解されることを明らかにした。これまで、SCF-Skp2系がp21の分解に関わることが報告されていたが、Skp2をサイレンシングしても影響はなかった。PCNA、Cu14, Cdt2をサイレンシングあるいは、p21のPIP-ボックスに変異を入れるとp21は、S期およびUV照射後、安定化した。Cu14やDDB1がp21と結合した。in vitroでp21がCu14-DDB1-Cdt2によりユビキチン化されることを証明するため、昆虫細胞にてこれらの因子を発現し精製した。精製複合体を、PCNAやDNA存在下でp21を基質としてユビキチン化反応を行なったところ、ユビキチン化産物と予想される高分子量産物が検出された。HeLa細胞でのp21タンパク質量を細胞周期を追って調べると、S期に減少し、G2期頃から増加し始めた。 これらの結果、S期の開始後、PCNAがクロマチンに結合すると、Cdt1に加えてCDKインヒビターp21もCu14-DDB1-Cdt2系により分解されるといえる。従って、PCNAは、細胞周期においてG1期の終了とS期の開始を結びつける重要な働きをしていると結論した。
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