研究概要 |
(1)pH低下に伴う血管平滑筋細胞の機能変化に対するOGR1ファミリーの関与 : ヒト血管平滑筋細胞では、長期間(数時間)細胞外pHを低下させると、プロスタグランジン産生酵素であるCOX-2の発現が誘導され、PGI2の産生がさらに増加する。PGI2は血小板凝集阻害や細胞増殖・遊走の抑制など、平滑筋機能に関わる。そこでこれらの応答に対するOGR1ファミリーの関与と、その細胞内シグナル伝達系の解析を、受容体特異的siRNA, 特異的阻害剤などを用いて解析した。その結果、これらの応答にOGR1が関与すること、Gi, Gqが連関することを見出した。またPGI2の産生はPKCに対する阻害剤で抑制された。すなわちこれらの応答にOGR1/Gi, Gq/PKC経路が関与することが推定された。(2) 好中球・マクロファージのサイトカイン産生応答に対するTDAG8の役割 : 細胞外pHの低下に伴い、好中球・マクロファージの機能が変化する。LPS刺激に対するマクロファージのサイトカイン産生応答は、細胞外pHの低下に伴い減弱する。今年度は、このpHによる抑制応答に対するTDAG8受容体の関与を、解析した。TDAG8ノックアウトマウス腹腔由来のマクロファージを用いた結果、上記抑制応答に部分的にTDAG8が関与することが明らかとなった。(3)pH低下に伴う骨芽細胞の機能変化に対するOGR1ファミリーの関与 : 細胞外pHの低下に伴い、正常ヒト骨芽細胞ではCOX-2の発現が誘導され、PGE2の産生が増加する。この細胞ではOGR1ファミリーのうち、OGR1の発現が高いことを観察している。そこで今年度は、pH低下に伴うCOX-2の発現誘導とPGE2産生に対するOGR1受容体の関与とそのシグナル伝達系の解析を、受容体特異的siRNA, 特異的阻害剤などを用いて解析した。その結果、これらの応答にOGR1が関与すること、Gi, Gqが連関すること、PKCが関与することを見出した。すなわちこれらの応答にOGR1/Gi, Gq/PKC経路が関与することが推定された。
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