研究課題
特定領域研究
研究目的は、植物のセルセンサーの一種である機械刺激センサーの構造と動作機構を明らかにすることである。これまで多くの人の研究から、機械刺激センサーの有力候補はCa^<2+>透過性機械受容チャネル(MSチャネル)であることが示唆されている。本研究を始める段階で、そのMSチャネル候補として、本研究代表者のグループがシロイヌナズナのMca1とMca2を特定していた。Mca1とMca2はアミノ酸配列上互いに73%同一であり、両者は共通の構造上の特徴(すなわち、N-halfの推定上の制御領域、EF-hand-likeモチーフ、coiled-coilモチーフ、PLAC8モチーフ、システインリッチ領域、および膜貫通セグメント)をもっている。本年度の研究では、モーダルシフトの観点からEF-hand-likeモチーフのCa^<2+>結合能を酵母発現系を利用して調べ、Mca1とMca2は確かに^<45>Ca^<2+>を結合することを明らかにした。Ca^<2+>結合はMca1とMca2の活性を調節する可能性が考えられる。また、酵母で発現させたMca1もMca2も、非還元条件でのSDS-PAGEにより2量体および4量体を形成することが示唆された。また、岡崎統合バイオの永山國昭教授と重松秀樹博士との共同研究により、Mca2を精製し、位相差低温電子顕微鏡により立体構造を観察した。その結果、まず精製したMca2も2量体と4量体を形成することを明らかにした。その上で、顕微鏡像の単粒子解析により、Mca2は4量体を形成しており、その膜貫通部分の大きさは4量体で構成されている既知のK^+チャネルKv1.2の膜貫通部分とほぼ同じであることを明らかにした。さらに、Mca1とMca2の生体における機能を解明する一環として、mca1欠損株とmca2欠損株の低温ショック後の[Ca^<2+>]_<cyt>の上昇をモニターした。その結果、両欠損株において低温ショック後の[Ca^<2+>]_<cyt>の上昇が野生株よりも約半分に低下していた。この結果は、Mca1とMca2が機械刺激だけでなく低温刺激の感知にも関与していることを示唆している。植物ゲノムにはTRPチャネルホモログは存在しないので、Mca1とMca2が植物においてTRPチャネル様の役割を担っている可能性が考えられる。
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Microbiology 154
ページ: 3775-3781
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http://www.u-galcugei.ac.jp/~iida/