研究課題
特定領域研究
動物の生活形態は進化の流れの中で、単独性から家族性、社会性へと変遷してきた。適応的生存戦略の一環として高度に組織されたアリの社会は、巣ごとの集団帰属性の確立と相互認知を前提としている。彼らは、相手にとって自分が仲間か否かをアピールすると同時に、仲間識別センサーを使って自分にとって相手が仲間か否かを識別し適正に行動するケミカルコミュニケーション能力を持つ。社会性昆虫の営巣形態は女王の産む子を多くのワーカー個体が養育することで血縁度の高い子孫を残す単女王制の方向に進んできたと説明されている。しかし、ある種のアリは巣を融合して多女王制のスーパーコロニーを形成し、近年世界各地で見られる外来侵入アリの異常繁殖要因ともなっている。そこで、私達は10数年にわたり年次的に生態学的観察がなされ、16kmにわたる融合巣の構成と規模がほぼ唯一確定されている最大級の北海道石狩浜スーパーコロニーのエゾアカヤマアリを対象に、多女王制の融合巣形成の根底にある巣仲間識別に基づく攻撃行動を司る仲間識別センサーの特性を単女王制の場合と比較し、エゾアカヤマアリが示す顕著な巣間寛容性をこのセンサーの仲間識別能の鈍化にもとついて説明することができた。一方で、私達は、クロオオアリのカースト間比較を行い、特に、雄アリが攻撃性に乏しく、"仲間識別感覚子"も"社会的攻撃中枢"も持たないことを見出した。そこで働きアリと雄アリの触角を使ったサブトラクションPCR法により、仲間識別感覚子特異的に機能する、受容体、チャンネルなどのセルセンサー遺伝子を効率的に探索することを狙って、雄アリにはなく働きアリの触角で発現している23個の遺伝子(11未知遺伝子+12既知遺伝子)と、逆に、働きアリにはなく雄アリの触角で発現している19個の遺伝子(12未知遺伝子+7既知遺伝子)を策定することができた。
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Zool. Sci 25
ページ: 195-204
Zoological Science 25
PLos. ONE Issue8,e661
ページ: 1-7