配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2009年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2008年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2007年度: 8,320千円 (直接経費: 6,400千円、間接経費: 1,920千円)
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研究概要 |
ツチガエルから多くの遺伝子(Dmrt1, WT1, CYP17, CYP19, Sox9, AR, SF1, Sox3等)を単離し、FISH法による染色体マッピングと性決定時期におけるそれらの遺伝子の発現解析を行った。その結果、3つの遺伝子AR,SF1,Sox3が性染色体の相同組み替えが起きない領域に存在することが判明した。つまり、これらの遺伝子は塩基置換等による遺伝子の損傷が修復できない領域に存在する事からAR,SF1,Sox3は退化しているか、或はやがて退化する運命にあることが分かった。それを実証するために卵核2倍性発生法によりZZ,WW胚を作製して両胚におけるSF1,Sox3,ARの発現を解析した。ZZ,WW胚ではSF1とSox3の発現が同じであるのに対し、ARの場合はZZ胚(Z-AR)では正常に発現するがWW胚(W-AR)は殆ど発現しない。W-ARが発現しないのは、W-ARの転写調節領域の塩基配列に変異が起きたため、転写調節因子が結合できない可能性を見いだした。その他の常染色体上の遺伝子の発現解析を行ったところ、エストロゲン合成酵素遺伝子CYP19が雌化に、またCYP19の転写調節にSox3が関わること、更にARとCYP17が雄化に深く関わることを見いだした。Sox3蛋白は直接CYP19の転写調節領域に結合して転写を調節することを、ChIPアッセイ、レポーターアッセイ等の分子生物学的手法を用いて明らかにした。多くの動物はステロイドホルモンの投与によって性が転換するが、その性転換では性決定遺伝子は関与しない。そこで、ツチガエルの性決定にはステロイドホルモンが重要である考え、以下の研究を行った。まず最初に未分化性腺では、ステロイド合成酵素遺伝子が発現し、酵素活性があり、雌はエストロゲンを雄はテストステロンを多く合成する事を見いだした。また、前述したW-ARは発現しないため受容体としての役割を果たさないが、Z-ARは正常に発現するため、ZZ(雄),ZW(雌)胚では受容体量が2:1となり、Z-ARとテスステロンの複合体が雄の決定に大きな役割を担う可能性あることも見いだした。更に、ツチガエルの卵細胞質には雌化或は雄化因子の存在が予想されているので、ツチガエル地方4集団のミトコンドリアDNAの塩基配列を決定した。XY型西日本、関東、及び東海集団のミトコンドリアDNAの塩基数は約17-kbpであるのに対し、ZW型新潟集団のそれは約21-kbpであった。塩基配列の解析だけでは雌雄化因子をコードする遺伝子を見つけられなかったので、卵細胞質因子はミトコンドリアのみならずゲノムDNAも深く関わっている可能性があることも分かった。また、脊椎動物の性決定時期は簡便な組織染色法で判定されていたが、基底膜を構成するラミニン蛋白を指標とすると、従来の時期よりもずっと早い時期に性が決定される事も明らかにした。
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